近視と偏食

 今日、頼んでおいた論文が届いた。題して「近視発生機転に関する研究」というやや古い論文だが、近視と体質、偏食との関係を近視児童213名について綿密な調査を行った研究である。この論文は、眼科の優れた研究に与えられる「市川賞」という賞を授与された有名な論文である。
 結論を簡単に要約すると、近視児童の78.8%に偏食が認められている。近視は偏食によって起こる率が極めて高いということだ。ではその偏食がどのような内容の偏食かというと、(1)砂糖過多:36.9%、(2)肉類および野菜の不足:25.6%、(3)肉類過多、野菜不足:17.9%、(4)肉類および野菜の不足+砂糖過多:13.1%、(5)肉類過多、野菜不足、砂糖過多:6.5%、となっている。
 つまり、近視の原因は偏食による「アチドーシス」であると結論づけている。「アチドーシス」というのは、血液酸毒症と呼ばれ、蛋白質・糖質・脂質などが体内で消化吸収されていく過程でできる酸を中和する能力が、低い状態である。酸を中和するのは、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムなどのアルカリであるので、これらのミネラルが、体液中に不足している状態ということも出来る。「アチドーシス」によって、眼球後局部強膜がゆるんでしまい、後ろに膨れ出てしまうというわけだ。
 殊に、近視の原因となる偏食は、上記の数字から分かるように、砂糖の過食である。先天性高度近視は、妊娠中の母親の「アチドーシス」が関係あると考えられる場合が少なくない、とも述べている。本来弾力性に富んでいる強膜にそれほどの影響が出るのであれば、筋肉の中でも非常に俊敏に反応する眼筋が、影響を受けないはずはあるまい。
 昨今、甘い物の過食をやめて、速読眼ができ始める方が多くなっているが、この論文は成る程と納得させてくれる。脳も、眼も、私たちが食べた食べ物のエッセンスでできていることは言うまでもないことである。脳力開発を目指すなら、やはり食べ物にも注意を払いたいものだ。(豊文)

金メダル

 速読で講師という立場を勤めているが、受講生から教わったり、感心したりすることも多い。今受講しているなかで、最高齢のKさんもそういう受講生の一人だ。Kさんは、現在、満82才。教室開設以来の全受講生のなかでも、最高齢だ。
 今年の3月の「世界バリバリバリュー」を見て速読に興味を持ち、説明会の話を聞き、早速4月から速読の受講を開始した。その向上心、行動力だけでも素晴らしいと講師一同感心して話題にしたものだが、さらに、この8月、シルバ・メソッドも受講し修了した。
 シルバ・メソッド・セミナーを終えての打ち上げの時、Kさんに乾杯の音頭をお願いすると、低音だがはっきりした声で、次のように挨拶してくださった。「意識下の問題に真正面から取り組んでいる体系的な訓練システムがあることに感心しました。来年逝くか、再来年逝くかと思うこの頃ですが、それまで、このセミナーで学んだテクニックを使って、自分の改善を図りたい」と。
 老人ボケという言葉が流行ってから、年を取ると、誰でも皆ぼけるてしまって、その話など聞くに値しないというような風潮があるように思う。いや、全くとんでもない。Kさんは、シルバ・メソッドの本質を的確に捉えているだけでなく、いつお迎えが来るかも知れないと自覚しながらも、自己を改善しようという意欲と向上心を持ち続けている。Kさんの生き様は、本当に素晴らしいと思う。
 折しも、アテネ・オリンピックで金メダルの奪取が続いているが、生き様を競う(競うべきものではないが)オリンピックがあったなら、私は、Kさんに金メダルをあげたいと思う。(豊文)

自分の内面に目を向ける教育

 今日は夏期集中セミナーの後半のまっただ中だ。同時に、8月の4日間連続のシルバ・メソッド・セミナーも始まった。いずれも多数の方々にご参加頂き、大変嬉しく感謝している。
 と同時に、受講生の皆さんは何を求めてうちの教室に通ってきているのだろうかと考えることがある。もちろん、表面的には、速読脳の開発ということだろうが、ただ速く読みたいというだけでは、この訓練は続かないのではないだろうか?
 私たちは、物質的にはきわめて豊かな社会に生きている。物は、溢れんばかりだ。しかしそのような現代社会にあって、何か満ち足りぬものがあることを暗黙知的に感じているのが現代人であるように思う。豊かに生きているべきはずなのに、思うような生き方ができない。自分はもっと力を発揮できるはずなのに、なぜか、発揮できない。多くの方が、このようなイライラ感を無意識のうちに募らせているのが、現代人のように思うのだ。
 私たちの教室が、多くの方に指示されているとすれば、まさにこの点で受講生に応えうる何かを持っているからだと思うし、おそらく、このことを抜きにしては、当教室の発展も有り得ないだろうと思っている。その内容をひとことで簡単にまとめるのは容易ではないが、敢えて言えば、目を外に向けて自分を豊かにしようとするのではなく、自分の内面に目を向け、意識レベルから自己の改革を図ろうとするところにあると思う。
 速読をどの程度にできるかは、自分を見、そしてコントロールする力がどれだけ育ったかを知る、ひとつの目安に過ぎない。が、尺度が不明な能力開発の世界にあって、「速読脳開発プログラム」は、明確な目安を有しているのである。実に有り難いことだ。
 話がやや七面倒くさくなってしまったが、21世紀に、自分の内面に目を向ける教育が不可欠なことだけは、確かなことと思っている。(豊文)

学会発表に思う

 この前の土曜日、久々に、学会なるものに参加してきた。というのは、ここ2年間大学と企業と3者で行ってきた速読脳に関する研究の発表があったからだ。土曜日は、「読書の習熟化が脳活動に与える影響:NIRSによる計測」と題して、共同研究者の大学院生が発表してくれた。
 NIRSというのは、近赤外線を、頭皮から投射して、反射してきた光の量を測定することで、脳の活動を調べる装置のことだ。近赤外線は可視光線にごく近い光なので、まったく無害であり、生まれたばかりの赤ちゃんの脳機能を調べることさえもできる。そんなわけで、近年脳機能の研究に活躍している器械である。
 今回の発表内容は、今までの、脳波やfMRIを用いた研究結果と同様、速読時には、脳の音韻処理を司る部位であるウェルニッケ野の活動が抑制されるということ、それと、従来報告されたことのない独特の振動が観察されること、であった。後者については、まだその発生機序がよく分からず、その解明が今後の楽しみなところだ。
 発表は、担当の大学院生がよく準備して臨んだお陰で、大変わかりやすかったが、ある大学の先生からでた質問は、ちょっとがっかりさせる内容であった。研究結果としては、否定のしようがないので、それ自体には肯定的なのだが、「速読出来たからといって読書能力が高いとは言えないだろう」というような意味のコメントが入るのである。そんなことは当然のことだが、敢えていうのは、「速読」に対する抵抗感があることを示しているわけだ。
 一方、次の日の日曜日のセミナーに参加した受講生のひとりは、ある大学のゼミの先生に推奨されてきた大学生であった。また、別のある大学の先生は、私の著書「速読の科学」をテキストにして、学生に速読のトレーニングをしているという。本来であれば、速読についてもっと研究すべき専門家がまごまごしているうちに、時代はどんどん進んでいくように思う。
 心して、「速読脳開発プログラム」の発展を期したいと改めて思った次第である。(豊文)